~人間関係と様々な問題~
ここでは介護福祉士試験に関する「精神衛生と精神保健」と「現代社会の精神保健」についての出題ポイントをまとめています。近年の社会変化は急激で、生活も根底から変化してきました。個人の精神生活にも大きな影響を与え、人間関係の希薄化、ジェネレーションギャップ、住宅問題、コンピュータストレスなど、ストレスの要因が増加していく中で、登校拒否、校内暴力、いじめ、出勤拒否など、様々な問題が生じてきました。
~【出題ポイント!】~
①精神衛生にかわって、近年は精神保健の語が使われる。
②精神保健の目的は、精神の健康維持と精神障害の予防・治療である。
③日本の精神保健の歩みは、1900年の「精神衛生法」が1988年「精神保健法」と改正された後も発達を続けている。
~精神衛生と精神保健~
「メンタルヘルス(Mental Health)」の訳として、かつては「精神衛生」という言葉が使われていました。1988年に精神衛生法が改正されて精神保健法となったのを契機に、現在は、一般の人の心の健康の保持や向上をも含む、より広い意味の「精神保健」の言葉が使われています。
~精神保健の目的~
精神保健は精神の健康の維持・増進、そして予防と治療を行い、精神障害を持ってしまった場合にも、その損失を最小限にするため、医学、教育、行政などあらゆる分野を包括した対応をしていきます。
精神保健の目的の第一は「予防」。・・・予防には次の3段階があります。
第1次予防・・・発生予防・・・人口の精神障害の発生率を抑える
第2次予防・・・早期治療と再発予防・・・精神障害の有病率を抑える
第3次予防・・・リハビリテーション・・社会復帰の促進
~現代社会の精神保健~
【出題ポイント!】
①社会変化は、人の精神にも大きな影響を与える。
②精神保健は、人間の発達段階(ライフステージ)により視点が変わる。
③発達段階は、乳幼児期/学業期/思春期/成人期/老人期に分けられる。
④児童虐待においては、無気力化、暴力化など、社会問題に感心を持つようにする。
【社会変化と精神保健】
近年の社会変化は急激で、生活も根底から変化してきました。このことは個人の精神生活にも大きな影響を与え、人間関係の希薄化、ジェネレーションギャップ、住宅問題、コンピュータストレスなど、ストレスの要因が増加していく中で、登校拒否、校内暴力、いじめ、出勤拒否など、様々な問題が生じてきました。このような状況で、
①家庭 ②学校 ③職場 ④地域社会
など、それぞれの場における精神保健の重要性はますます高まっています。
【発達に応じた精神保健】
人間の発達段階(ライフステージ)に応じて、精神保健の視点も変わってきます。ライフステージは以下の5つに大別できます。それぞれのステージの特徴をつかむことは、的確な介護にも重要なポイントとなります。
①乳幼児期(0~6歳)
8ヶ月頃から「人みしり」が始まり、1歳以降に母親から少しずつ独立していきます。3歳頃に反抗期が、同時に性的役割の分化も始まります。
②学童期(6~12歳)
自己主張ができるようになります。いじめや登校拒否(不登校)などの問題のほか、近年、児童虐待が増加しています。
③思春期(12~20歳)
心身ともに最も変動の大きい時期で、この年代特有の不安や緊張がみられます。思春期やせ症などのほか、近年は中・高校生の薬物乱用やアルコール依存が表面化しています。
④成人期(20~65歳)
人生では円熟の時期ですが、職場や家庭のストレスによるアルコール依存や出社拒否、セックスレス、あるいは妊娠・出産の受容がうまくできず児童虐待に至る例、熟年離婚など、様々な問題を抱える年代でもあります。
⑤老年期(65歳以上)
老人の心理については、高齢社会が進む中で、中高年の自殺の増加が注目されます。
【アルコールの問題】
週3日以上、1日に日本酒1合以上、またはビール1本以上を飲んでいる飲酒習慣者の割合(20歳以上)は25.4%にのぼっています。さらに、純アルコールに換算して1日150ミリリットル(ビール大ビン5本、ウイスキーボトル半分、日本酒5合に相当)以上を摂取するアルコール依存症者数は、全国で227万人にのぼると推計されています。
【児童虐待】
近年、「子どもをかわいいと思えない」「思わず手をあげてしまう」など、専門機関への児童虐待に関する相談が増えています。虐待は大別して4つに分類されます。
①身体的虐待 ②保護の怠慢・拒否 ③性的虐待 ④心理的虐待
核家族化などによる母親の孤立や育児不安、親自身の未熟など原因は様々ですが、虐待は子どもの心に大きな傷を残すだけでなく、時には知的発達や運動機能の発達にも障害を残すことがあります。また、虐待を受けた者が親になって、今度は虐待する側にまわるという「虐待の連鎖」もあることが指摘されています。対策として、児童相談所や医療・福祉機関及び企業などの連携による、地域の支援体制づくりが進められています。
【整理メモ】
「無気力症候群」
ストレス社会では、さまざまな「心の病」が増加している。無気力症候群の患者は、無関心、無気力、目標の喪失を自覚しながらも、治療の必要性を自覚せず、自分から治療を求めるケースは少ない。学業や仕事といった本来の業務からは逃避するが、それ以外では活発に活動する事例がみられる。